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ep94 裁決(前篇)

Author: 根上真気
last update Last Updated: 2025-06-27 06:11:21
「マデリーン先輩を許してください!ブラッドヘルム王女として、このとおりお願いします!」

リザレリスはひたすら懇願し続けた。一国の王女が、自分を傷つけた他国の女を必死に助けようとする姿は、皆にどう映っただろう。少なくとも、当事者の心を打たないはずがなかった。

「うっ、うぅ、うぅ......」

マデリーンが顔を押さえて嗚咽を洩らした。

「リザさま......」エミルは王女の慈悲深さに感動していた。正直、マデリーンのことは殺してやりたいとさえ思っていた。裁かれる程度でも足りないと。しかし今、目の前の光景を目の当たりにして、そんな思いも吹き飛んでしまった。

「ブラッドヘルムさま......」クララは口を押さえて、泣いてしまうのを堪えていた。こんな優しい人に自分は酷いことをしてしまったのかと思うと、胸が苦しくなって仕方なかった。

「リザレリス。お前は......」レイナードは、リザレリスに対して尊敬と感謝の思いでいっぱいだった。そして、ひとつの覚悟を決めた。

「ブラッドヘルムさんの主張はわかりました」おもむろに理事長が口をひらいた。「しかし、いくらブラッドヘルム王女の頼みであっても、学校秩序の....いえ、我が国の秩序の観点から彼女を不問に伏すということはできかねます」

「で、でも!」とリザレリス。

理事長は溜息をつくと、話を続ける。

「マデリーン・ラッチェンに殺意はなかった。その点に関しては本人の主張どおり認めます。特にブラッドヘルムさんに対しての傷害行為は偶発的なものだった。この点も認めます。しかし、レイナード・ヴォーン・ラザーフォードくんに対して暴行の意思があったことは本人も認めています。つまり、彼女は第二王子に対して暴行の故意、あるいは傷害の故意があったということです」

「け、結果的に何もなかったからいいじゃないですか!」

「もし、ブラッドヘルムさんが間に入らなかった場合どうなっていたのか。我が国の王子殿下が傷つけられた......いえ、それどころじゃない。もしかしたら殺害されていた可能性があるのです。つまり、マデリーン・ラッチェンのやったことは、事情や経緯はどうあれ外形的には『王子殺害未遂』となってしまうのです」

「!!」

「それはもはや学院内で処理できる問題から逸脱してしまいます。加害者の死罪もありうるのです。だからこそ我々も今、非常に頭を悩ませているのです。その
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